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ニシネルアーワークス「エリー115MD」開発10年の歴史

執筆者の写真: Outdoor Actibu
Outdoor Actibu
3 時間前
読了時間: 13分

この記事は、西根博司さんがブログに書いた「エリー115MD開発10年の歴史」を紹介するものです。この物語をぜひ多くの方に知っていただきたくて掲載しています。

西根さんのオリジナルブログ:https://beatour.exblog.jp/

ニシネルアーワークス「エリー115MD」開発10年の歴史

今日のブログでは、エリー115MDの10年にわたる開発の歴史を振り返ってみたいと思います。

私のルアー開発史上、最も難しかった開発の足跡を、時系列で紹介していきます。

2012年10月 エリー115MD構想スタート

最初の木製プロトタイプ

2013年4月 2号プロト誕生

2号プロトの木製マスターモデル

ウレタンフォームボディを作るためのマスターモデル

1号プロトに満足できず、2号プロトを製作しました。

2号プロトは木製ではなく、ウレタンフォーム製のプロトへと進化しました。

エリー115MDの形とアクションは、この2号プロトで完成しています。

2013年 ウレタンフォーム2号プロトのテスト

ウレタンフォームボディのエリー115MDプロト

巻きでもジャークでも高い性能を見せた2号プロトは非常によく釣れ、エリー湖でたくさんのスモールマウスを釣りました。

巻けば軽く蛇行しながらキビキビ泳ぎ、軽いジャークで生命感のあるダートアクションを出す。とても独特なバランスのルアーです。

2013年8月 アウターウェイトシステムの原型を考案

初期型のアウターウェイト

アウターウェイトシステムのアイデアは、今は琵琶湖のプロガイドとして活躍するマイキがカナダにホームステイに来たとき、見せてくれたアイデアがきっかけでした。

落ち鮎WPの浮力を調整するために、マイキがワンタッチで着脱できるウェイトを自作していたのです。

スナップに小さなボールウェイトを付けただけのシンプルなものでしたが、エリー115MDにも使えることが分かり、アウターウェイトシステムの構想が生まれました。

そしてこのアイデアが、プロトの弱点をカバーしてくれました。

その弱点とは、ウレタンフォーム製のプロトは比重に個体差があり、ちょうどいいサスペンドに仕上げるのがとても難しかったことです。

新しいアウターウェイトシステムのおかげで、ウェイトで調整してスローフローティングにすれば、完璧にサスペンドするプロトを作れるようになりました。

ただ当時は、サスペンド調整用としか考えておらず、アウターウェイトシステムにそれ以上の可能性があるとは気づいていませんでした。

2013〜14年 ウレタンフォームプロトの限界にぶつかる

過酷なテストで傷ついたボディ

アウターウェイト付きのウレタンフォーム2号プロトは相変わらずよく釣れましたが、使えば使うほど限界も見えてきました。

ひとつは個体差です。アウターウェイトである程度は補えたものの、ウレタンフォームでの製造はやはりとても難しく、製品化はかなり厳しく思えました。

もっと問題だったのが耐久性です。

ジャークベイトなので、強いジャークを繰り返すとフックでボディが削られ、あっという間にボディが傷んでしまいます。

そのため、中空ABSボディのジャークベイトを作りたいという思いが日に日に強くなっていきました。

2014年10月 中空プロトに挑戦

ハンドメイドの中空プロト1号

試行錯誤の末、ハンドメイドながら中空プロトの製作に成功しました。

ソリッドボディから中空ボディに変わっても、セッティングさえきちんと出せば、ウレタンフォームの2号プロトと同じレベルのアクションが出せることが分かりました。

2015年1月 エリー115MDの中空プラスチック化を決断

カナダ国内での自社生産を目指し、ルアーの金型を作ってくれる金型メーカーをカナダで探し始めました。

同時に中国での生産も視野に入れ、中国の工場のリサーチも始めました。

2015年7月 金型製作スタート

金型をセットした射出成形機

この時点では、金型はまだ改良点だらけでした。

自分がまだ若くて驚きました(白髪がない!笑)

友人の紹介で金型メーカーと出会い、ついにカナダでエリー115MDの金型づくりが始まりました。

2015年9月 プロトで巨大マスキーをキャッチ

巨大マスキー。私の人生最大魚です。

アッパーナイアガラリバーにて。

殿堂入りのプロト

ビッグマスキーとのファイトでフックが伸びています。

ウレタンフォームのプロトで、人生最大となる122.6cmのマスキーを釣りました!

スモールマウスを狙っていたら浮いてきて、一瞬、丸太が浮いてきたのかと思いました。

巨大なマスキーはゆっくり浮上し、1回目のトゥイッチでルアーの方に頭を向け、2回目で距離を詰め、3回目のトゥイッチでテールフックを軽くついばむように食いました。

そこから無事にキャッチするまで20分ほどかかりましたが、一緒に釣りをしていた娘(当時9歳)より大きく、娘は泣いてしまいました。

2015年12月 純カナダ製エリー115MDの金型とプロトがついに完成

純カナダ製プロト

上:リブラインのないプロト1号

下:のちにリブラインを加えたもの

ABS(ボーン)素材なのでリップは不透明

カナダで金型をお願いした会社は、自動車メーカーに部品を納めるほど技術力の高い金型メーカーでしたが、ルアーの金型は初めてだったので、かなり苦労しました。それでも、なんとか金型を完成させてくれました。

こうして、純カナダ製の中空ボディルアー、エリー115MDのプロト1号が完成しました!

この時点ではクリアのABS樹脂が手に入らず、プロトはボーン素材で作っていました。

2016年2月 純カナダ製プロト1号の改善点が見つかる

理想のアクションを詰めるため、さまざまなバランスのプロトをテスト

テストを進めるうちに、純カナダ製の中空プロト1号は、巻きの性能ではウレタンフォームのプロトに匹敵するものの、ダートの性能が少し落ちることが分かりました。

いろいろ調べた結果、ボディ幅を14.5mmから14.0mmにすればダート性能が改善することを確認しました。

ただ、そのためには金型に大手術が必要になることに頭を抱えました。

2016年3月 1回目の金型改修

金型の大手術を決断

左:改修前 右:改修後

エンジニアと相談した結果、金型を改修すればボディ幅を0.5mm変えられることが分かり、初めての金型改修に踏み切りました。

かなりの大手術でしたが成功し、プロトのダート性能が向上しました。

2016年3月 キープキャストでプロトを発表

NLWにとって最初で最後のキープキャスト出展

名古屋のキープキャストで、エリー115MDのプロトを発表しました。

この時点では、その年のうちに日本でも発売できると思っていたのですが……。

2016年9月 クリアABSを輸入

クリア化に成功したパーツ

ここまでのプロトはボーン素材のABSで作っていたのでリップが白く、なんとかクリア素材で作りたかったのですが、カナダではその素材がなかなか見つからず、思いのほか苦労しました。

プラスチックの仕入れ先にクリアABSを探してもらいましたが、カナダには需要がないと言われ、仕方なく韓国から大量に輸入することにしました。

最小ロットで輸入したにもかかわらず、その量があまりに多く、「失敗したらどうしよう」と思ったものです。

2016〜2017年 純カナダ製中空ボディ エリー115MDの徹底テスト

破壊テストをしたフック

当時は、釣りの時間の半分以上をエリー115MDのテストに使っていました。

釣り込んだ結果、アウターウェイトシステムが今の形に熟成され、同時に、アウターウェイトでスローシンキングにすれば、普通のジャークベイトでは攻められない深さでもジャークベイトが機能することを発見しました。

この発見で、まったく新しいジャークベイトの世界に飛び込むことになりました。

釣りのテストと並行して、北米、日本、中国でエリー115MDに使えそうなフックを手に入れられる限り集め、耐久性と性能を同時にテストしました。

最終的にイチカワフィッシングのフックに出会い、その完成度と耐久性の高さに驚き、長い時間をかけて候補に挙げていたフックをすべて押しのけて、イチカワフィッシングのRCカマキリ トレブルフックを搭載することに決めました。

試したフックは100種類以上。このフックが見つかって最後のピースが埋まり、純カナダ製エリー115MDが完成しました。

2017年7月 ついに純カナダ製エリー115MDが完成

北米限定モデルとして発売したエリー115MD

エリー115MDはついに完成しましたが、この時点ではNLWの地下工房で1つずつ手作業で仕上げるしかなく、生産数が限られていたため、北米と自社オンラインストアだけでの販売となりました。

2017年11月 製造工程の効率化を目指す

量産の最大の壁となったパーツの接着

エリー115MDはついに生産に入りましたが、製造工程(特に接着工程)に時間がかかりすぎるため、左右のパーツを手で接着する工程を機械化しようと、ソニックウェルディング(超音波溶着)の研究を始めました。これなしでは量産は不可能だったので、昼夜を問わず取り組みました。

研究の結果、ソニックウェルディングが実現できれば、製造工程が大幅に効率化されるうえ、ルアーの耐久性も大きく向上することが分かりました。

2018年1月 ソニックウェルディングのテストを決断

ソニックウェルディングのテストを手伝ってくれたおじいちゃんエンジニア

ソニックウェルディングマシン。この機械の間にルアーを挟み、超音波をかけて接着面を溶かして溶着する仕組みです。

ソニックウェルディングにはパーツ形状の見直しが必要で、そのためにまた金型の大手術が必要になります。

しかも失敗しても金型は元に戻せないので、すべてが台無しになるリスクを負っての決断でした。

悩んだ末、失敗したときに備えて、すでに北米で販売していたエリー115MDのパーツを数千個成形しておいてから、金型改修に賭けることにしました。

しかしその賭けは実らず、何度金型を改修しても、ソニックウェルディングはうまくいきませんでした。

2018年6月 エリー95SD製品化プロジェクト始動

エリー115MDは完全に座礁してしまいましたが、しばらく前から開発・プロトテストを進めていたエリー95SDのテスト結果が良かったので、量産化を決定。金型の製作を始めました。

この頃には、手作りとはいえ中空プラスチックのプロトを作る技術ができていて、エリー115MDのときのように木→ウレタンフォーム→中空プラスチックと段階を踏まなくても、一気に中空プラスチックのプロトを作れるようになっていました。

2018年8月 金型改修の最後の挑戦

さまざまな調整でソニックウェルディングのテストを実施

溶着はできたものの、ウェイトステーが破損したプロト

何度挑戦してもソニックウェルディングは成功せず、純カナダ製エリー115MDの設計ではソニックウェルディングは不可能という結論に至りました。

原因は、純カナダ製エリー115MDのプラスチックの壁が極端に薄いことでした。

プラスチックが薄いほどアクションは良くなりますが、接着の難易度が上がるという問題を抱えていて、その限界を技術的に越えられませんでした。

それは同時に、日本での国内販売への道が閉ざされることも意味していました。

最後の挑戦として、ソニックウェルディングできる厚さまで壁を厚くしてみましたが、完成したプロトは、もはやエリー115MDとは呼べないほど性能が落ちてしまいました。

金型は使えなくなり、大量に余ったプラスチック素材は金型屋さんに引き取ってもらうことに……。

2018年11月 エリー115SDのプロトテスト開始

純カナダ製エリー115MDのリップを改造して作った115SDプロト

金型改修の前に念のため成形しておいたブランクを1つずつ手作業で仕上げ、純カナダ製エリー115MDは北米限定のオンライン販売で着実に売れ続けました。

エリー115MDを改造して作ったプロトが、エリー115SDの原型になりました。

2018年12月 エリー95SDの金型が完成

同年6月に中国の提携工場で始めたエリー95SDの金型が、ついに完成しました。

2015年からのリサーチで見つけたこの中国工場で作った最初のモデル、チッパワRB(2018年1月発売)の品質が素晴らしかったので、エリーシリーズも中国で生産する方針に切り替えました。

この工場を選んだ理由は、普通なら技術的に難しい、極薄の壁のボディをソニックウェルディングできる技術を持っていたこと。そしてチームのモチベーションが非常に高いことでした。

この工場は自社オリジナルブランドの製品も展開していて、そのどれもがコピー品ではなかったことも、選んだ決め手になりました。

年に2回工場を訪れ、塗装の技術など改善が必要な部分を細かく指導して、品質向上に努めました。

そうした努力を重ねた結果、チーム全体が一丸となって良い製品を作ろうという気持ちになり、それが今のNLW製品の品質につながっています。

2019年5月 エリー95SDの量産プロトが完成

開発を進めていたエリー95SDの量産プロトがついに完成し、最終テストに入りました。

2019年5月 エリー115SD製品化プロジェクト始動

純カナダ製エリー115MDを改造して作った115SDのプロトがとても良い結果を出したので、製品化を進めることを決定。金型の製作が始まりました。

2019年9月 エリー115SDの量産プロトが完成

エリー115SDの金型が完成し、量産パーツを使ったプロトのテストが始まりました。

2019年12月 エリー95SD出荷開始

エリー95SDが完成し、日本・北米・ヨーロッパで同時発売!

2020年7月 エリー115SD出荷開始!

エリー115SDが完成し、日本・北米・ヨーロッパで同時発売!

2021年2月 エリー115MD再始動プロジェクト

手作業で細かく作っていたエリー115MDの製造を休止し、中国の提携工場で再び製品化する計画を本格的に検討し始めました。

その可能性を探るため、提携工場で完成したエリー115SDを改造することで、量産できるボディでエリー115MDが実現できるかどうかの研究を始めました。

2021年3月 改造エリー115MDの3Dパーツが完成し、ハンドメイドプロトのテスト開始

提携工場で作った3Dパーツ

3Dパーツをもとに、カナダのNLW地下工房で作ったプロト

エリー115SDの量産版を改造して作ったエリー115MDのプロトを煮詰めた結果、完璧なアクションが出せることが分かり、提携工場でエリー115MDの製品化に再挑戦することを決めました。

純カナダ製エリー115MDを改造して115SDが生まれ、その115SDをさらに改造することで、エリー115MDがもう一度命を吹き込まれたのです。

不思議な運命をたどって復活したエリー115MDですが、それまでに製品化に成功していたエリー95SDと115SDで培ったノウハウが、エリー115MDの金型づくりにとても役立ちました。

同時に、エリー115SDを改造したプロトで、こちらも良いテスト結果が出ていたエリー115TWの金型製作も始めました。

世界的なコロナ禍でプロジェクトは遅れましたが、なんとか前に進めることができました。

2022年3月 ついにエリー115MDの金型が完成!

紆余曲折を経て、ついに完成したボディパーツ

提携工場で、エリー115MDの量産用金型がついに完成し、製品化の最終段階に入りました。

量産金型で成形した最終パーツを組み立て、テストと調整を繰り返し、微調整を重ねて最終セッティングを詰めていきました。

2022年6月 土壇場ですべてがひっくり返る

工場から届いた最終サンプル

長い長い試行錯誤の末、エリー115MDの最終量産サンプルが完成しました!

ところが喜んで最終チェックをしてみると、狙っていたアクションが完璧ではなかったのです……。

超高速域で安定性が足りず、限界を超えるとルアーが水面から飛び出してしまうことが分かり、頭を抱えました。

それ以外のアクションは完璧で、このまま発売するか、発売を延期して改良するか悩みましたが、発売を延期して改良する道を選びました。

この時点でボディのプラスチックパーツの成形はすでに終わっていて、そのパーツは諦めてリサイクルに回しました。その数、3,000個。

2022年7月 エリー115TW出荷開始

エリー115MDと同時に製品化を進めていたエリー115TWが先に完成し、デビューしました。

2022年9月 エリー115MDの金型改良が完了

上:改良前のプロト 下:改良後のプロト リップの角度がわずかに違います

3,000個のボディパーツを諦めて金型を作り直した結果はどうだったのか。

届いた改良パーツを祈るような気持ちで組み立て、最終テストを湖からライブ配信することにしました。

純カナダ製エリー115MDの金型改修を最後まで成功させられなかった経験から、不安しかない挑戦でしたが、ライブ配信のテストで弱点が完全に克服されていることを確認できました。たくさんの方に見守られながら、ついにプロジェクトを完成させることができました。

最後の改良は、リップの角度を4度に設定することでした。

2022年12月 エリー115MD出荷開始

エリー115MD誕生

10年かけて、エリー115MDがついに完成しました。

良いか悪いかは私には判断できませんが、できる限りのベストを尽くしたことだけは自信を持って言えます。

エリー115MDが皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

 
 
 

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